高校の授業料無償化は2010年(平成22年)に公立高校を対象として開始されました。
東京都と大阪府では2024年以前より独自の支援を実施していますが、より拡大していくため2026年度には全国で授業料を無償化する合意がなされています。
高校の授業料が無償化するのはよいことのように思われますが、かえって教育格差を助長するなどの問題点も指摘されています。
本記事では高校の授業料無償化の目的や申請方法、学校の選び方などを解説します。
高校の授業料無償化はいつから始まった?

高校の授業料無償化は2010年(平成22年)に、公立高校を対象として開始されました。
私立高校の場合は所得に応じて年額11万8000円(1ヶ月あたり9900円)もしくは39万6000円(1ヶ月あたり33000円)が支払われるようになりました。
東京都・大阪府では2024年度より独自に所得制限なしの授業料無償化が実施されており、全ての世帯で私立高校の授業料無償化が導入されています。
2025年の4月からは所得に関係なく国公立・私立を問わず、一律年額11万8000円(1ヶ月あたり9900円)の支援が始まりました。
さらに2026年度からは全ての世帯を対象に、収入に関係なく最大で45万7000円を上限に支援が開始されます。
高校の授業料無償化の目的

高校の授業料無償化には次の目的があります。
- 教育格差の是正
- 少子化対策
- 職業選択の幅を広げる
高校の授業料無償化の目的①教育格差の是正
高校の授業料無償化の目的として、教育格差の是正が挙げられます。
高校の授業料無償化を進めていけば、これまで経済的な事情で進学をあきらめていた人材が高校で頭角を現し、推薦入試で大学に進学できるなどの可能性が生じます。
一方で、高校の授業料無償化がかえって教育格差を拡大するとの見方があるのも事実です。
もともと裕福な家庭は授業料無償化により得られる支援金を塾や習い事に投入し、さらに高いレベルの学校をめざせるためです。
純粋に教育の機会を得たい子どもにとって、高校の授業料無償化は有益な制度といえます。
しかし、学力や学歴で地位や収入が決まる社会である以上、授業料無償化は持てる者がさらに有利になる結果は避けられません。
高校の授業料無償化の目的②少子化対策
高校の授業料無償化制度を導入したきっかけの1つが少子化対策です。
2024年には1人の女性が生涯に産む子供の数が1.15人と過去最低を更新しており、少子化対策は多年にわたり国としての重要な問題であり続けています。
少子化にはさまざまな理由がありますが、1つの理由として高校・大学に通う際に必要な資金の問題が挙げられます。
家庭によっては1人、もしくは2人を高校に入学させるので手いっぱいのケースも少なくありません。
また、1人目が私立高校・大学に進学した場合、2人目には大学進学をあきらめてもらうケースも見られます。
結婚や出産をためらう若い世代が増加しているなか、高校の授業料無償化は少子化の歯止めをかける施策として期待されています。
高校の授業料無償化の目的③職業選択の幅を広げる
高校の授業料無償化には、職業選択の幅を広げる目的もあります。
日本では長きにわたりメリトクラシー(学力や学歴で地位や収入が決まる社会:能力主義)の仕組みがあり、高いレベルの教育を受けないと一流企業への就職はおぼつきません。
高いレベルの高校に入学できなければ一流大学への進学は難しく、高卒の学歴しかなければさらに就職は厳しくなります。
授業料無償化により選択できる高校の幅が広がれば、自分の能力を活かせる高校を選べるため、職業選択の自由度も増す結果となります。
高校の授業料無償化に関する注意点

高校の授業料無償化に関して、以下の2点に注意する必要があります。
- 無料で高校に通えるわけではない
- 私立の場合は経済的余裕が求められる
- 申請が必要
それぞれについて解説します。
高校の授業料無償化に関する注意点①無料で高校に通えるわけではない
高校の授業料無償化と聞くと、無料で高校に通えるイメージをお持ちの方もいます。
実際には無償化といっても、自己負担額がゼロになる訳ではありません。
あくまでも授業料が実質無償になるだけで、制服代や橋座費などの費用は発生します。
また、授業料無償化の支援を受ける場合であっても、いったんは授業料を自己負担する必要があります。
支援を受けられるかどうかは高校に入学してから決定されるため、ある程度の費用は事前に用意しておかなければなりません。
高校の授業料無償化に関する注意点②私立の場合は経済的余裕が求められる
高校の授業料無償化にともない、これまでは経済的に厳しかった私立高校への門戸が開かれる可能性が出てきます。
しかし、私立高校は公立高校に比べて制服代や学校指定の体操着など、必要となる費用が多い傾向にあります。
学校によっては1人に1台のタブレット端末の購入が必要なケースも少なくありません。
また、修学旅行も東南アジアや欧米といった学校があり、授業料以外に必要な費用が多い点を踏まえておく必要があります。
収入増の見込みがなく授業料以外に必要な費用の支払いが難しそうであれば、公立高校を選択するのも1つの手といえるでしょう。
高校の授業料無償化に関する注意点③申請が必要
高校の授業料無償化について知っておくべきことの1つが、入学後に申請が必要な点です。
授業料無償化といっても入学前に支援を受けられるわけではなく、入学後に申請して自己負担額の返金を受ける必要があります。
申請は原則として入学後の4月中に行う必要があります。
4月を過ぎても支援が打ち切られる訳ではありませんが、4月分を受け取れなくなる恐れがあるため注意が必要です。
申請には学校から配布される受給資格認定申請書、および保護者のマイナンバーがわかる書類が必要です。
申請方法は書類での提出、もしくはオンラインの2種類です。
書類で提出する場合は受給資格認定申請書に必要事項を記入し、マイナンバーカードのコピーや、マイナンバーが記載された住民票の写しなどと一緒に提出します。
オンラインの場合は高等学校等就学支援金オンライン申請システム「e-Shien」のサイトにアクセスし、学校から配布された書類に記載されているログインIDおよびパスワードを入力します。
支援金は個人の銀行などに振り込まれるのではなく学校側に支給されるため、手元に帰ってくるのは7月を過ぎるのが一般的です。
高校無償化にともなう学校の選び方

高校の授業料無償化にともない、選択できる学校の範囲が広がるため、子どもに合った高校を選ぶことが重要です。
子どもに合った学校を選ぶ際は、以下の点をチェックしてください。
- グローバル教育に力を入れているか
- デジタルを活用した授業を導入しているか
- 複数校が参加する発表会を行っているか
親世代とは異なり現代の高校では外部との連携を重視する傾向にあります。
高校のカリキュラムや公式サイトなどに、STEAM教育に関する取り組みが紹介されているか確認しておきましょう。
高校の授業料無償化はいつから始まった?|まとめ
高校の授業料無償化は2010年(平成22年)に公立高校を対象として開始され、2026年度には全ての世帯を対象に、収入に関係なく最大で45万7000円を上限に支援が開始されます。
授業料無償化に関しては賛否両論ありますが、これまで経済的事情で進学をあきらめていた子どもの学びの機会が拡大するのは間違いありません。
授業料の無償化が適用されるためには入学後の手続きが必要なため、4月中には書類もしくはオンラインでの申請を済ませておきましょう。
子どもがやりたいことや将来進みたい道などを考慮し、学校見学で進学したい高校を決めるのがおすすめです。