勉強中に音楽を聴く人をよく見かけます。「無音だと集中できない」「人の声や物音が気になる」など、勉強に集中するために音楽を聴く人が多いようですね。
一方で、「勉強中に音楽を聴くと気が散るのでは?」という疑問の声も聞かれます。はたして、音楽を聴くことで勉強の効率や集中力に影響はあるのでしょうか?
この記事では、音楽を聴きながらの「ながら勉強」が持つメリットやデメリット、音楽を聴きながら勉強する際に注意したいポイントなどを解説していきます。
音楽を聴きながら勉強するメリットは?
勉強中に音楽を聴くことには賛否ありますが、音楽が勉強にもたらすメリットは確かに存在します。まずは音楽を聴きながら勉強する利点を4点ご紹介します。
楽しい気分で勉強に取り組める
勉強は、わからないことや解けない問題を地道に克服していく作業です。わからないものに取り掛かるのは憂鬱なもので、なかなか勉強を始める気にならないこともありますよね。
そんな時、好きな音楽を聴きながら勉強に取り掛かることで、気分が晴れる可能性があります。
物事へのやる気や意欲を高める働きを持つ神経伝達物質「ドーパミン」は、好きな音楽を聴いて気分が高揚している時に大量に分泌されることが、カナダのマギル大学の研究で明らかになっています。
また、このドーパミンは好きな音楽を聴く前、音楽を聴くことへの期待感だけでも多く分泌されるそうです。
勉強を始める気がどうしてもわかない時は、好きな音楽を聴くことで、やる気がわいて前向きな気分で勉強に取り組めるかもしれません。
音楽によるリラックス効果が得られる
音楽には、ストレスを軽減させ人をリラックスさせる効果があると言われています。
音楽を聴くことでストレスホルモンが減少するほか、幸せホルモンとも呼ばれる「セロトニン」が分泌されることがわかっているのです。
つまり音楽を聴きながら勉強することで、勉強中に感じるストレスをより早く軽減させ、リラックスした気持ちで勉強に挑みやすくなるという効果が期待できます。
周りの雑音を気にせず勉強できる
カフェなどでの勉強中、周りの話し声や雑音などが気になって集中できないという経験をした人は少なくないでしょう。自室で勉強していても、リビングで家族が観ているテレビの音が鬱陶しく感じられることがありますよね。
しかし音楽を聴いていれば、このような雑音をシャットアウトできます。外部から遮断された自分の世界にこもれるのです。
このように、勉強の邪魔になる音を、不快にならない別の音でかき消す「マスキング効果」のおかげで、より勉強に集中しやすくなります。
集中力や記憶力アップも期待できる
ここまで、音楽には興奮作用やリラックス効果、マスキング効果があることをご紹介してきました。音楽が持つこれらの効果を上手に活用することで、勉強中の集中力アップが期待できます。
また、記憶は五感と密接に関係していると言われています。ふとしたにおいや音楽などがきっかけで、急に過去のことが思い出したという経験をした人もいるのではないでしょうか。
音楽を聴きながら勉強すると、その時聴いていた音楽と、その時勉強した内容が頭の中で結び付けられ、記憶に残りやすくなったり、記憶を呼び起こしやすくなったりする可能性があるのです。
このように、音楽が持つ様々な効果や作用を勉強に取り入れることで、勉強中の集中力や記憶力までもがアップするかもしれません。
勉強中に音楽を聴くことにデメリットはあるの?
音楽が勉強にプラスの効果をもたらす部分があるのは確かですが、一方で勉強中に音楽を聴くことによるデメリットも無視できません。
ながら勉強のデメリットとして真っ先に思い浮かぶのが「集中できない」ですが、実はそれ以外にもいくつか問題があります。
勉強中に音楽を聴くことで生じるデメリットについて解説します。
人によって集中力が低下する可能性がある
先ほど、勉強中に音楽を聴くことで集中力アップが期待できるとご紹介しました。しかし、この効果には個人差があります。
実は、勉強中に音楽を聴く習慣がない人は、音楽のある環境下で勉強させられるとより強い苛立ちや不快感を覚える、という実験結果が出ているのです。一方、普段音楽を聴きながら勉強している人では、音楽の有無による不快感の変化に大きな差はありませんでした。
どうやら、もともと勉強中に音楽を聴く習慣がある人は、そうでない人よりも音楽への寛容度が高いようなのです。
たとえ友達から「音楽を聞きながら勉強すると集中できるよ」とおすすめされたとしても、自分にも合うとは限りません。これまで音楽なしで勉強してきた人なら、真似をすると逆効果になってしまう可能性があります。
無音の環境で集中できなくなる
音楽を聴きながら勉強することに慣れすぎてしまうと、音楽がない環境で勉強せざるを得ない時に、落ち着かなくなってしまうおそれがあります。
特に試験などでは要注意です。試験会場では当然音楽は聴けません。試験中に雑談をする人はいませんが、まわりの人の息遣いや鼻をすする音、試験監督の足音やシャープペンのノック音など、無音の会場に響くこれら些細な雑音は、慣れていないと妙に気になるものです。
自分が望んだ音しか存在しない環境での勉強を続けていると、その環境が用意できない時に、大きくペースを崩されてしまうかもしれません。
歌詞に気を取られてしまう
音楽にもさまざまな種類があります。なかでも歌詞がついている曲、とりわけストーリー性の高い歌詞がある曲は、つい歌詞の方に意識が向いてしまい、勉強の集中力を削ぐ原因になりかねません。
文章問題を「無音状態」「歌詞のない音楽を流しながら」「歌詞付きの音楽を流しながら」の3条件に分けて解かせたところ、「歌詞付きの音楽を流しながら」の条件で間違いが増加した、という研究結果があります。
さらに、同じ歌詞付きの曲でも、歌詞にストーリー性があるものの方が解答率が下がるようです。お気に入りの曲だからといって、歌詞付きの音楽を勉強のお供に選ぶと、かえって邪魔になってしまうかもしれません。
リラックスしすぎるのも問題?
音楽によるリラックス効果で快適に勉強できるのはいいことですが、あまりリラックスしすぎるのも望ましくありません。
勉強には適度な緊張感も大切です。勉強中にリラックスしすぎると、気がゆるんでしまい、やる気や集中力が維持しにくくなるかもしれません。うっかり心地よくなってしまい、眠気に襲われるなどということも考えられます。
勉強中にリラックス効果を追求するのもほどほどにしておきましょう。
暗記系科目には向かない可能性も
先ほどもご紹介したとおり、記憶は五感と深く関係していると言われています。そんな記憶の性質を利用して、何かを覚える際に声に出す・音読する(聴覚)ことで暗記効率を上げる、という暗記法があります。
この暗記法を実践する場合、音楽がかかっていると暗記の邪魔になってしまうかもしれません。特に歌詞付きの曲では、覚えようとする単語・語句以外の言葉が耳に入ってしまうことになります。
暗記系の科目を勉強する際は、音楽はあまり向いていないでしょう。
勉強中に音楽を聴くときの注意点
これまで解説してきた内容を踏まえ、勉強中に音楽を聴くのであれば、以下の点に注意することをおすすめします。
- 音楽を聴きながらの勉強に慣れすぎない。時々、自習室などの他人が大勢いる環境で、音楽を聴かずに勉強する練習をする。
- 気が散らないよう、歌詞のない曲を選ぶ。
- 勉強内容や気分に応じて、音楽の有無や聴く曲の種類をかえる。
- 音楽が勉強にもたらす効果には個人差があるので、音楽の力を過信しない。
勉強中の音楽の効果と注意点|まとめ
勉強中に音楽を聴くことで、憂鬱な気分が高揚したり、リラックスできたりと、音楽が持つ様々なメリットを享受できるかもしれません。
ただしいいことばかりではありません。集中できなくなるなど、デメリットも確かに存在します。個人差も大きく、友達が「集中できる」と言っていたから自分も、というわけにはいきません。
大切なのは、メリットとデメリット両方を理解したうえで、自分に合った方法で適度に音楽を利用することです。上手に音楽と付き合って、勉強の効率をアップさせましょう。