「高校受験のために内申点を上げよう」――これは、中学生がよく聞く言葉ですね。では、内申点とはどのように計算され、どうすれば上げられるのかを知っていますか?
高校受験を有利にクリアするためにも、知っているようで知らない内申点のことを、しっかり学んでおきましょう。
今回は、内申点とはなにかや、なぜ内申点が高校受験に必要なのか、内申点の計算方法や上げ方までわかりやすく解説します。
まずは内申点の基本を押さえよう!
内申点を上げたくても、内申点とはなにかを知らなければ上げようがありません。
まずは基本中の基本、**「内申点とはどのようなものか」**から説明します。
内申点とは?
内申点とは「志望校に伝える生徒の成績をわかりやすく点数化したもの」のこと。つまり、9教科(英・国・数・理・社・保健体育・技術家庭・美術・音楽)の成績の合計点を意味します。
通知表を見ると、各教科の成績が5段階で表されているかと思います。内申点は、この各教科の1〜5の成績(評定)を9教科分合計したもの。素内申や素点などとも言います。
オール5(満点)なら、9教科×5で45点です。
内申書ってなに? 通知表と違うの?
通知表は、その学期・学年の成績を生徒に知らせるためのもの。一方、内申書は生徒の成績や学校生活の様子をまとめて、志望校に提出するためのものです。「調査書」とも呼びます。
あなたという生徒がどんな人物かを志望校に紹介する書類、と考えてください。
内申書には、内申点のほかに、欠席日数や部活動、委員会活動、学校での様子などが書かれます。内申書に書かれる項目は、都道府県によってさまざまです。
内申点はテストの成績で決まるの?
先ほど「内申点=各教科の成績」と説明しましたね。成績ですから、当然、テストの点数は内申点に影響します。ただし、それだけで決まるわけではありません。
内申点のもととなるのは、通知表に書かれている1~5の評定です。この評定は、テストの点だけでなく、提出物や授業態度などもあわせて決められています。
成績を付ける際に、各教科について
「①知識・技能」
「②思考力・判断力・表現力」
「③学習に取り組む態度」
の3つの項目に分け、それぞれA~Cの3段階で評価しています。
そして、この3項目の評価を総合して、5段階での成績(評定)を決めているのです。つまり、テストを頑張って①②の項目でいい評価をとっても、③の評価が悪ければ、評定は落ちてしまいます。
評価の例
|教科|評価項目|評価
(A~C)|評定
(1~5)|
|国語|①知識・技能|A|5|
||②思考力・判断力・表現力|A|5|
||③学習に取り組む態度|A|5|
|数学|①知識・技能|A|4|
||②思考力・判断力・表現力|A|4|
||③学習に取り組む態度|C|4|
もしテストで満点をとっても、提出物をちゃんと出さなければ「5」はとれないでしょう。逆に、テストの点が少し低めでも、授業態度がよければ「4」が狙えるかも。
このように、テストの点・授業中の発言や態度、提出物などから内申点が決められるのです。
内申点は高校入試にどのように使われるの?
内申点とはなにかがわかったら、次は「内申点が受験にどう使われるか」が気になるところ。 内申点がどう入試に響くのか、どの程度重要なのかを、以下で解説します。
内申書は合格・不合格判定の大切な材料!
簡単に言うと、内申書は、高校が受験生を合格にするか不合格にするか決めるための材料です。
高校受験の結果は、一般入試なら「受験当日の学力検査の得点+内申点」の合計で決まります。推薦でも「面接や小論文などの得点+内申点」の合計で合否が決まるのです。
また、「内申点〇〇点以上」を合格条件にしている高校もあります。学力検査で高得点をとっても、内申点がこれより低いと、それだけで不合格になるということです。
「高校受験には内申点が大切」と言われる理由が、もうわかりましたね。
内申点の「重み」は、都道府県や学校によって異なる
ちなみに、内申点がどれだけ重要になるか、その程度は都道府県や志望校・学科により異なります。
都立高校の場合、学力検査:内申点の比率を7:3として、学力検査の得点+内申点の合計点(1,000点満点)を出しています。しかし、この比率が6:4や8:2になる県や学校もあります。
内申の比率が高い学校を受験するなら、内申点の高さが合格のカギ。学力検査の点数が多少低くても、内申点が高ければ合格できる可能性があります。
一方、学力検査の比率が高い学校では、学力検査の点数がより重要になります。高得点をとれば、内申点が低くても合格できるかもしれないのです。
いつの内申点が受験に使われるの?
では、中学校3年間のうち、いつの成績が内申点に使われるのでしょうか? 実は、これも都道府県によって異なるのです。
3年生の1年間の成績のみが内申に使われる地域もあれば、1~3年生の3年分の成績が使われるエリアもあります。
中学3年間の成績が全て内申点に反映されるなら、1年生のうちから頑張らなくてはなりませんね。自分が住んでいる都道府県のルールをはやめに確認しておきましょう。
内申点の計算方法は?
ここまで読んで「自分の内申点を計算してみたい」と思った人もいるでしょう。しかし、ここでひとつ注意が必要です。実は、内申点の計算方法も、都道府県ごとに大きく異なるのです。
最初にご紹介した「9教科×5段階評価=45点満点」というのは、あくまで「素点」の計算方法。ここに都道府県ごとのルールが加わり、実際の合否判定に使われる「内申点」が出されます。
例として東京都と神奈川県の計算方法をご紹介しますので、自分が住んでいるエリアのルールも調べてから、内申点を計算してみてください。
東京都立高校の場合
都立高校では、3年生の1年間の成績のみが内申点の計算に使われます。3年生2学期の通知表があれば、内申点が出せるはずです。
内申点の素点(調査書素点)を出す際、東京では、実技教科の評定を2倍にして計算します。
**英語+国語+数学+理科+社会+(保健体育+技術家庭+美術+音楽)×2=調査書素点**
オール5(満点)なら、調査書素点は65点になりますね。
さて、先ほど、東京都では学力検査の得点と内申点の合計が1,000点満点になると説明しました。学力検査の得点:内申点の比率が原則7:3なので、内申点の満点は300点です。
しかし素点の満点は65点。そのため、これが300点満点になるよう以下の式で変換します。
**内申点の満点300点×(自分の調査書素点÷素点の満点65点)=内申点(調査書点)**
これで出た数字が、合否判定で使われる内申点です。
9教科オール4の場合、上の2つの式に当てはめて計算すると、調査書素点が48点、内申点が221点になります。小数点以下は切り捨てです。
神奈川県立高校の場合
神奈川県立高校では、内申点の計算に2年間分(2~3年生)の評定を使います。そして、3年次の評定は2倍にして計算します。素点を出す式は以下のとおりです。
**2年生の評定9教科分の合計+3年生の評定9教科分の合計×2=調査書素点**
2年、3年ともにオール5(満点)であれば、素点は135点です。
しかし、受験する学校によっては「特定の教科の評定を△倍にして計算する」というルールがあることも。この場合は満点が変わりますので、志望校のルールも要チェックです。
また、神奈川県立高校の入試では、学力検査:内申点:面接点の比率も志望校ごとに違います。計算の前に、志望校の比率を確認しておきましょう。
さて、最終的な内申点を出す方法についてです。上の式で出る素点の満点は100点以上になるため、まず100点満点に換算します。その後、その点数に学校ごとの内申点の比率をかけましょう。
**自分の調査書素点×(100÷素点の満点)×内申点の比率=内申点(調査書点)**
成績がオール4、特定教科の加算なしの場合、素点は108点(135点満点)になります。仮に学力検査:内申点:面接点=5:3:2の学校を受験するならば、内申の比率が3なので、内申点は240点です。
東京都と比べると少しややこしいですね。神奈川県の場合「学校ごとにかける数が違う」という点が重要なポイントです。
内申点を上げるコツ・ポイント!
ここまで、内申点とはどのようなものかを解説してきました。内申点の大切さが理解できたかと思います。
では最後に「内申点を上げるにはどうしたらいいの?」という疑問にお答えしましょう。内申点を上げるコツは、主に以下の4つです。
テストの点数を上げる
「内申点=中学校での成績」です。成績が上がれば内申点も上がります。そして成績には当然、学校の定期テストの点数が大きく影響します。
内申点を上げたければ、とにかく定期テストの点数を上げましょう。簡単ではありませんが、これが一番大切です。
宿題・提出物などはキッチリと!
テストで高得点をとれば必ず成績が上がる、とは限りません。先ほども説明したとおり、成績にはテストの点数のほか、提出物なども影響します。
宿題や提出物は期限内にキッチリと。これも内申点アップのコツです。
授業態度や学習への姿勢を見直す
授業中の態度・姿勢も内申点に影響します。「塾で習ったから」と授業を聞き流していませんか?まじめに聞いていないこと、意外とバレていますよ。
特に副教科(実技教科)には要注意。東京のように、実技4教科の評定が内申点に大きく影響するケースもあります。副教科の時間に内職なんてもってのほかです。
苦手な科目でも、まじめに、積極的に授業に参加していれば、そこまで悪い評価はつきません。これを機に、授業態度も見直しましょう。
成績に自信がないときは
都道府県や志望校によっては、学校の成績のほか、部活動や委員会などの活動も内申点にプラスされることがあります。
この場合は、資格を取ったり、さまざまな活動に積極的に参加したりして、内申点の加算を狙いましょう。まずは住んでいる地域や志望校のルールをチェック!
それでも内申点に自信がないなら、自分の内申点にあった高校を選ぶことも検討してみてください。「学力検査の比率が高い高校を受験し、内申点の低さをカバーする」というのも立派な作戦です。
内申点の計算方法や対策 まとめ
今回は、内申点とはなにか、その計算方法や上げ方を解説しました。内申点とはどのようなものかが理解できましたか。
内申点とは、中学校の成績を数値化したもの。高校入試で、面接や学力検査などの得点とあわせて、合格・不合格の判定に使われます。
つまり、内申点が高い方が、志望校に合格できる可能性が高くなります。計算方法や扱いは都道府県や志望校により違いますので、事前に調べておきましょう。
また、自分の内申点にあった志望校を選ぶのも戦略のひとつ。困ったら、学校の先生や塾の先生に相談してみて! 一緒に作戦を考えてくれるはずですよ。