中学生になると、算数という教科がなくなり、新しく数学という教科が登場します。**「中身は似ているのになぜ名前が変わるの?」**と不思議に思ったことはありませんか。
実は、算数と数学の間には、みなさんが思っている以上の大きな違いがあるのです。
今回は、算数と数学の内容や考え方、目的などの違いをわかりやすく説明します。あわせて、数学を苦手科目にしないためのコツも伝授しますよ。
まずは算数と数学の考え方を知ろう
数学は、算数の中学生バージョン?内容が少し難しくなっただけ? いえいえ、それは違います。
確かに算数は数学の一部ではありますが、あくまで別のもの。2つの違いを説明する前に、まず算数と数学がそれぞれどんな教科かを確認しましょう。
算数ってどんな教科?
「算数」という言葉を調べると、「数をかぞえること。計算すること。また、その結果得られた数。」と出てきます。goo国語辞典 (opens new window)
算数とは、簡単に言うと「計算をして答えを出す」教科です。身のまわりにある具体的な数や形についての、計算の仕方や扱い方を学びます。
勉強する内容は、たし算・ひき算・かけ算・わり算といった基本的な計算方法、買い物のお金の計算、速さや距離の計算、図形の面積など。どれも、いつもの生活で扱う数ばかりですね。
身近な数を正しく計算して正しい答えを出す。これが算数の考え方です。
数学ってどんな教科?
「数学」という言葉の意味は、「数量および空間図形の性質について研究する学問。算術・代数学・幾何学・解析学・微分学・積分学などの総称。」です。goo国語辞典 (opens new window)
算数と比べると何やら難しいことが書いてありますが、大切なのは「学問」という単語。 そう、数学は、「なぜそうなるのかを追求する」学問なのです。 答えを出すことより、答えを出すためのプロセスに注目しています。
数学では、マイナスの数や文字式など、実際には触れることができない抽象的な数も扱います。具体的なひとつひとつのケースではなく、広く一般的なしくみを表現する方法を学びます。 「なぜそうなるのか」を、数字や記号を使って論理的・一般的に考え、表現する。これが数学の考え方です。
ズバリ、算数と数学の違いは「目的」!
ここまで読んで、算数と数学の違いがなんとなくわかった人もいるでしょう。 一言で言ってしまうと、算数と数学では学ぶ「目的」が違います。
算数は、計算スキルを身につけるための教科です。その学習の目的は、日常生活で困らないような計算力を養うこと。ですから、扱う数は具体的で、生活に密着したものばかりです。
テストの内容も「計算の正しさ」「答えの正しさ」を確認するものがほとんど。とにかく数を正しく計算できるようになることが算数の目的です。
一方で数学は、答えを出すプロセスを学ぶための教科です。学ぶ目的は、ものごとを論理的に考える力を育てること。「なぜそうなるのか」というルールに注目するので、抽象的な数も扱います。
テストでは、記述問題や、「その答えになる理由」を答える証明問題などが出されます。ものごとの仕組みを数を使って理解して、論理的に説明できるようになることが、数学の目的です。
このとおり、算数と数学はそもそも学ぶ目的がまったく違い、そのために別の教科として区別されているんですね。
算数が苦手な人は数学も苦手?
算数が苦手でも、数学まで苦手になるとは限りません。算数は得意なのに数学が苦手という人もいれば、算数が苦手でも数学はなぜかわかるという人もいます。
それもそのはず、算数と数学は別ものだからです。勉強方法や考え方が変われば、得意・不得意だって変わるでしょう。
それを知らず、数学を算数の続きと考えていると、算数が得意でも数学でつまずきやすくなります。具体的な数から、急に文字や記号ばかりの式に変われば、混乱するのも当然です。
逆に、小学生のころは計算ミスが多くて算数が苦手だったけれど、数学になってから急に成績が伸びた、というケースもありますよ。
数学が「計算する教科」ではなく「考える教科」ということを知っていれば、中学に上がってから挽回することだって可能なのです。
数学を苦手科目にしないために気を付けたいこと
残念なことに、数学が苦手になってしまう中学生は少なくないようです。しかしこの先、理系の科目を学ぶのに数学の知識は欠かせません。
また、数学的なものの考え方は、将来仕事をするうえでかなり役に立ちます。「数学で習うことなんて普段の生活で使わないし」などとあきらめるのは、実はとてももったいないことなのです。
中学校は、数学という広い学問の入口。そこで苦手意識を持ってしまわないよう、どうか以下の4つのポイントに気をつけて、数学に取り組んでみてください。
算数と数学の違いをきちんと理解しよう
繰り返しになりますが、数学が算数の延長だと考えていると、数学が苦手になりやすくなります。
算数は計算する教科、数学はプロセスを考える教科です。その考え方も勉強の目的も、そして勉強方法も違うということを、まずはしっかり意識しましょう。
2つの教科の違いが理解できていれば、数学は「なんか難しそう」という先入観による根拠のない苦手意識を防げるはずです。
予習と復習が大切
数学では、勉強する内容をあらかじめ確認しておく「予習」と、習ったことがきちんと理解できているかをチェックする「復習」「演習」が成績アップのカギになります。
なかでも注目したいのが予習。次の授業で習う範囲を、授業の前に読んでみてください。「よくわからない」と思うかもしれませんが、「どこがわからないのか」がわかればOK。
これから習う内容がどんなものか、どんな点がよくわからないのか、それを知ってから授業を受けるだけで、受け取れる情報の数がいっそう増え、理解がしやすくなりますよ。
公式は丸暗記ではなく、理解することが重要
数学の公式はとにかく丸暗記するのがいいと思われがちですが、実はこれはあまりおすすめできません。
もちろん、公式は覚えなくてはならないものです。でも、意味も理解せずただ丸暗記するのはNG。公式の役割や意味がわかっていないと、応用がきかず、せっかくの公式を使いこなせないなんてことも。
結果、「公式は覚えたのになぜか点が取れない」と苦手意識を抱く原因になりかねません。
新しく公式を習ったら、まずはその公式の各項目が何を表しているのか、どうしてその公式が成り立つのかを、ていねいに確認しましょう。暗記するのはそのあとです。
どこでつまずいたのかをしっかり見極める
算数や数学は「積み上げ型教科」と呼ばれます。前に習った内容を理解することで、そのあとに習う高度な内容がわかるようになるからです。学んだことが「積み上がる」のですね。
これはつまり、前に習った内容がよくわかっていないと、後に習う内容が理解できなくなる、ということを意味します。
積み木を積むとき、土台がしっかりしていないと高くは積めませんよね。それと同じことです。数学を学ぶには、ひとつひとつの単元をしっかり理解して、土台を固めるのが大切。
ですから、数学でつまずいたときは、一度立ち止まって「どこで、なぜつまずいたのか」を見極めましょう。無視して先に進むと、この先さらにつまずきやすくなります。
わからないことを放置しない。わからないときは、前に学んだ内容までさかのぼって見直してみる。こんな地道な作業が、数学を学ぶうえでは近道になるんですね。
算数と数学の違い まとめ
算数と数学にははっきりとした違いがあります。算数が身近な数で正確に計算するための教科であるのに対し、数学は抽象的な数でプロセスを考えるための学問である、という違いです。
この違いを知らずに数学に進むと、学ぶ内容や考え方が変わったことに気づかないまま「数学は難しい」「自分は数学に向いてない」と思い込んで、苦手意識をもつことになります。
算数と数学の違いを頭に入れてから、新しい数学の世界に飛びこみましょう。予習復習をしっかりして、学んだことを地道に積み上げていけば、数学は決して怖いものではありません。