スーパーサイエンスハイスクール(SSH)は2002年(平成14年)に始まった文部科学省が実施する制度の1つで、理科や数学、科学技術などの教育に力を入れる高校、および中高一貫校をさまざまな角度から支援するのが特徴です。
いわゆる難関校と呼ばれる偏差値が高い学校がスーパーサイエンスハイスクールに指定されており、専門的な教育を受けると進学や就職にも有利に働きます。
こちらの記事では、スーパーサイエンスハイスクールの特徴や進学するメリット、代表的な指定校および主な取り組みについて解説します。
スーパーサイエンスハイスクールについて
はじめに、スーパーサイエンスハイスクールについて、以下の4点を紹介します。
- 沿革
- 授業内容
- 入学方法
- 卒業生の進路
沿革
スーパーサイエンスハイスクールは、科学技術や理数系教育に重点を置いている学校を文部科学省が指定する制度です。
もともと1999年に文部科学省によって「若手科学者育成プログラム」が発足しましたが、プログラムが好評だったため、発展形としてスーパーサイエンスハイスクール制度が始まりました。
スーパーサイエンスハイスクール制度が始まった2002年当初にはおよそ7億円の予算が組まれましたが、2007年にはおよそ14億円、2010年にはおよそ20億円と、予算が増額傾向にあります。
科学技術系の人材を育てる目的で制度が設けられており、2024年度は全国でのべ64校がスーパーサイエンスハイスクールに指定されています。
授業内容
スーパーサイエンスハイスクールの授業内容は高度な数学や物理、化学、情報科学などの専門教育が中心です。
学習指導要綱によらない独自の教育課程が編成・実施される点が一般的な高校とは異なる点です。
また、STEM(science、technology、engineering and mathematics)教育に基づいた実験や課題研究も行われています。
STEM教育は2000年代のアメリカで始まった教育モデルで、思考力や問題解決能力、創造力を身につける点に重点が置かれます。
日本の教育はかねてより子どもにとって受動的すぎると指摘されており、ペーパーテストの結果にとらわれすぎる点も批判対象の1つです。
STEM教育では思考能力や問題解決能力、想像力が身に付くため、グローバルな人材の育成に有益と考えられています。
入学方法
スーパーサイエンスハイスクールに入学する方法は以下の3つです。
- 推薦入試
- 一般選抜
- 海外選抜
スーパーサイエンスハイスクールに入学する方法の1つが推薦入試です。
中学校の教諭や校長、高校の教員などから推薦を受けると、スーパーサイエンスハイスクールに入学できます。
スーパーサイエンスハイスクールが定めた基準にパスすれば、一般選抜でも入学可能です。
一般選抜では試験の成績や面接の結果に加え、自己表現力も問われます。
留学生や海外の学校に通っている生徒も、スーパーサイエンスハイスクールの定めが基準にパスすれば入学可能です。
卒業生の進路
スーパーサイエンスハイスクールも高等教育のため、卒業生は大学に進むのが一般的です。
大学での専門教育を受けて論文を発表する卒業生も多く、研究者や技術者として早くからステップアップできる点がメリットの1つです。
大学を卒業後もスーパーサイエンスハイスクールで学んだ経験を活かし、科学技術分野を中心にさまざまな分野で活躍しています。
中には自動車メーカーに就職して、現在話題となっている自動運転技術の開発に携わった卒業生もいます。
スーパーサイエンスハイスクールの基礎枠について
スーパーサイエンスハイスクールには大きく分けて基礎枠、および科学技術人材育成重点枠の2つがあります。
基礎枠はさらに以下2つに分けられています。
- 開発・実践型
- 先導的改革型
基礎枠①開発・実践型
開発・実践型はスーパーサイエンスハイスクールのポピュラーな型です。
開発型のスーパーサイエンスハイスクールでは、新しいカリキュラムにより、理数系の高い能力をつける点に重点が置かれます。
実践型のスーパーサイエンスハイスクールでは、開発型から発展して実践的な研究・開発を実施する点が特徴です。
スーパーサイエンスハイスクールに指定されるとはじめは開発型に属し、5年間の実績を経たのちに実践型へとレベルアップできます。
基礎枠②先導的改革型
先導的改革型に指定されるためには、過去に4回以上スーパーサイエンスハイスクールに指定される必要があります。
先導的改革型に指定されたスーパーサイエンスハイスクールが、独自に課題を設定する点が特徴です。
また、優秀な科学技術者を育成するための先進的な教育課程を広める点も期待されています。
先導的改革型のスーパーサイエンスハイスクールは、他の学校の先頭に立って科学技術人材育成に貢献しなければなりません。
スーパーサイエンスハイスクールのメリット
スーパーサイエンスハイスクールに通う主なメリットは以下の通りです。
- 教員のレベルが高い
- STEM教育に対応している
- 論理的思考力が身に付く
- 自分で考える力が身に付く
- 難関大のハードルが下がる
スーパーサイエンスハイスクールのメリット①教員のレベルが高い
スーパーサイエンスハイスクールでは、さまざまな分野で著名な研究者や業界人の指導が受けられます。
特殊なスキルや能力を持った教員が多いため、さまざまな分野における能力の向上が期待できます。
一般的な高校では受けられない高度な数学や物理、化学などを学べる点がスーパーサイエンスハイスクールに通うメリットと言えるでしょう。
スーパーサイエンスハイスクールのメリット②STEM教育に対応している
STEM教育は化学・技術・工学・数学に重点をおいた教育モデルの1つです。
実験や研究、プログラミングなどを通して、生徒が自主的に学び、考える力を養う点が特徴です。
さまざまな分野を広く浅く学ぶのではなく、1つの分野を深く掘り下げて学べる点がスーパーサイエンスハイスクールに通うメリットと言えます。
スーパーサイエンスハイスクールのメリット③論理的思考能力が身に付く
スーパーサイエンスハイスクールでは、論理的思考能力を身につけるための教育を行っています。
論理的思考能力とは、問題を正確に把握したうえで解決するための能力です。
理系に必要な能力と思われがちですが、文系の生徒にも論理的思考能力が求められます。
スーパーサイエンスハイスクールは学校自体が指定を受ける制度のため、文系の生徒が入学して論理的思考能力を身につけることも可能です。
スーパーサイエンスハイスクールのメリット④自分で考える力が身に付く
スーパーサイエンスハイスクールでは、研究発表による能力の向上を重視しています。
研究発表を行うためには受け身ではなく、自分で課題を設定して解決する能力が必要となります。
その結果、自分で考える力を身につけられる点がスーパーサイエンスハイスクールに通うメリットの1つです。
大学入試だけでなく、社会人になっても自分で考える力は役に立ちます。
スーパーサイエンスハイスクールのメリット⑤難関大のハードルが下がる
スーパーサイエンスハイスクールに通うと、高度な数学や化学、物理などの知識が身に付きます。
受験の面で言えば試験の点数や内申点がアップするため、難関大のハードルが下がるといったメリットがあります。
そもそもスーパーサイエンスハイスクールに指定される高校は、偏差値が高い難関校ばかりです。
そのため、通常の授業を受けるだけでも志望校に合格できる確率がアップすると言えるでしょう。
全国の代表的なスーパーサイエンスハイスクールと主な取り組み
全国の代表的なスーパーサイエンスハイスクールを以下5つの地域に分け、主な取り組みを簡単に紹介します。
- 北海道・東北
- 関東・甲信越
- 近畿・東海
- 中国・四国
- 九州・沖縄
北海道・東北
北海道では北海道滝川高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では持続可能な社会を築く科学技術系人材を育成する「協働・共創カリキュラム」が特徴です。
東北地方では宮城県仙台第三高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では大学などの研究施設との連携を積極的に行い、高校の教室ではできない実験やフィールドワークを実施しています。
関東・甲信越
関東では東京都立戸山高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では1年生から物理・科学・生物・地学・数学・情報から好きなコースを選択し、専門的な教育を受けられる点が特徴です。
甲信越地方では山梨県立日川高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では将来の国際的な科学技術系人材を育成することを目指し、 理数教育に重点を置いた研究開発を行っています。
近畿・東海
近畿では学校法人立命館立命館高等学校が、20年以上にわたりスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では海外理数教育重点校との科学交流を充実させ、国際共同課題研究に取り組んでいる点が特徴です。
東海地方では静岡市立高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では主体的に課題の解決に取り組む生徒の育成や、国際社会で活躍・貢献できる人材の育成に重点を置いています。
中国・四国
中国地方では広島大学附属高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では教育課程上に独自の「SAGAs」を取り入れ、洞察力・深い知性・先見の明の形成に取り組んでいる点が特徴です。
四国地方では愛媛県立松山南高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では新しい価値を創成する人材の育成だけでなく、地域の理数教育のレベルアップにも取り組んでいます。
九州・沖縄≺/h3>
九州地方では熊本県立熊本北高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では「共創的視野を持ったグローバル科学技術人材育成のための教育カリキュラムの開発と普及」に取り組んでいる点が特徴です。
沖縄では沖縄県立球陽高等学校がスーパーサイエンスハイスクールの指定を受けています。
同校では**「地域社会の未来を創成するグローカルイノベーション人材の育成」**に取り組んでいます。
スーパーサイエンスハイスクールに入学したい方には学研オンエアがおすすめ!
スーパーサイエンスハイスクールに指定される学校はいずれも難関校が多いため、合格するためには自宅学習が欠かせません。
自宅ではなかなか勉強に集中できないお子さんには、学研オンエアがおすすめです。
学研オンエアではトップ講師の講義がリアルタイムで受けられるため、効率的に自宅学習を続けられる点がメリットの1つです。
スーパーサイエンスハイスクールの受験をお考えの親御さんは、学研オンエアをご検討ください。
スーパーサイエンスハイスクールについて|まとめ
スーパーサイエンスハイスクールでは科学技術人材育成のため、レベルの高い理数系教育を受けられる点が特徴です。
理数系の大学に進みたい生徒はもちろん、将来科学の分野で活躍したい生徒にとっても魅力的な学校ばかりです。
しかし、スーパーサイエンスハイスクールに指定される学校はそもそも偏差値が高いため、合格のためには自宅学習が欠かせません。
自宅学習を効率的に続けたい方には、トップ講師の講義がオンラインで受けられる学研オンエアがおすすめです。